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【考察】念仏の勧めについてⅡ(4)

親鸞聖人と蓮如上人とでは歴史的に200年ほどの差異があり、その時々の時代背景も、世間の情勢も、問題としているところも違います。その違いを無視して、蓮如上人の『御文章』に顕著に表れている教義のみをもって親鸞教学の代用とすることは、時として親鸞聖人、蓮如上人の教え勧めとは違ったものを生み出してしまう可能性があります。

今回は、前回と重複部分もありますが、稲城選恵師の著書より親鸞聖人において問題とされていたことを伺います。

『蓮如上人の生涯とその教学の大綱』
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 蓮如上人の教学を正しく理解するためにはその背景を看過しては通じない。このことは従来の宗学では余り問題にされなかったが、甚だ重要である。親鸞聖人の教学の背景も同様である。しかし蓮師と宗祖の上では異なるのである。このことは七祖の上にも通ずる。

 現在、蓮如上人の教学が親鸞聖人の教学を屈折したとか、変容しているといわれるのはこの背景を問題としないからである。宗祖の時代の背景は対聖道門である。これに対し、蓮師の背景は聖道門の他宗よりも法然上人門下の異流の他流である。宗祖の『教行信証』の背景には冠頭の題号によっても他宗聖道門に対している。

 即ち『教行信証』「化身土巻」後序によると、

  「竊かに以みれば聖道の諸教は行証久しく廃れ、浄土の真宗は証道今盛なり……」

とあり、題号の「教行証文類」の教行証は聖道門に対していることが知られる。しかし、対内的な理由も勿論存するのである。栂尾の明恵上人―一一七三~一二三二―は学徳兼備の高僧であった。師は法然上人入寂の十ヶ月後に『摧邪輪』を著し、法然上人の『選択集』を鋭く批判している。

 「法然のいっていることは天魔外道の法であり、諸悪の根源はこの書にある」とまでいっている。この『摧邪輪』を読んで、法然上人の門下が黙認する人が存するであろうか。この『摧邪輪』には菩提心を否定することと、聖道門を群賊悪獣という二点を中心に出している。更に『摧邪輪荘厳記』には十六点あげている。『教行信証』撰述の意図は正しく聖道門に対する反駁、専修念仏の真義を明らかにするところにあったのである。更に建仁寺栄西―一一四一~一二一五―は『六祖法宝壇経』により、西方極楽を否定している。このことは『信巻』別序に、

  「自性唯心に沈んで、浄土の真証を貶ず」

によっても知られる。更に当時比叡山の学頭といわれた宝地房証真師である。法然上人と年齢の差も余りないといわれるが、師が西方極楽を批判し、『法華玄義私釈』には多くの難点をあげている。宗祖は叡山時代に師の教えをうけていると思われる。それ故、『真仏土巻』には「西方十万億仏土」の『讃阿弥陀仏偈』の文を略している。また、西方とか極楽という用語を余り用いなかったのも、このような背景が考えられる。それ故、『教行信証』の背景には当時の聖道門、南都北嶺の仏教、明恵上人等を看過しては理解出来得ないものがある。更に当時の為政者等の現世祈祷、法然上人門下の一念義、多念義系の分裂等も考えられる。
(p.23~p.25)
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「蓮如上人の河内での『御文章』」
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……今は宗祖聖人と蓮如上人の共通点と相違点の主なものをみることにしよう。

 先づ相違する面をみると、第一に時代背景である。宗祖聖人―一一七三~一二六二―の時代は平安末期から鎌倉時代の北条時頼の時代である。この間、源頼朝が征夷大将軍になったのは一一九二年、宗祖のニ十歳である。この間、権力をほしいまゝにした藤原一族が滅亡し、平家が頭を上げたが、このおごる平家も源氏のために亡ぼされ、この源氏も三代もつづくことなく北条氏に権力を奪われたのである。全く権力の争奪戦の渦中にあり、加ふるに重なる天災地変により、乱世の時代といわれる。それ故、平安末期より末法思想が滲透したのである。更に当時の既成教団の南都北嶺の諸僧は宗祖の「悲歎述懐和讃」にある如く、

  末法悪世のかなしみは 南都北嶺の仏法者の
  輿かく僧達力者法師  高位をもてなす名としたり
  仏法あだなるしるしには 比丘比丘尼を奴婢として
  法師僧徒のたふとさも  僕住ものゝ名としたり

とあり、僧侶本来の立場は全く看過され、ただ自らの名利の禍の中に溺れていることを宗祖は悲歎されている。それ故、時代の危機、民衆の苦悩の解決を与えるような指導原理はなく、卜占祭祀の呪術しかなかったのである。

 この時代の危機を歴史的現実として誕生したのが法然上人の専修念仏の教えであった。この浄土宗の独立宣言は当時の既成教団に一大センセイションを惹起したのである。特に既成教団の中にも当時の代表的学僧はすべて念仏教団を批判し、政治権力と結合し、念仏禁制もしばしば行われたのである。特に北条泰時に絶対の信頼をうけた明恵上人―一一七三~一二三二―は学徳兼備の高僧であったが、師が『選択集』の批判の『摧邪輪』を著し、法然のいうことは天魔外道の法であると罵倒したのである。このような南都北嶺をはじめ、当時の既成教団の批判に対する法然上人の専修念仏の正意を鮮明にすることは生涯をかけられた使命といわれる。主著『教行信証』はこの意を明らかにされたものである。更に法然上人門下の異流―一念義多念義―に対し、真宗の肝要、念仏の奥義を明らかにされたのである。
(一三四~一三五頁)
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親鸞聖人の問題は、これらによっても分かるように対聖道門が主たるものでした。専修念仏の正意を明らかにし、聖道諸師の論難に的確に応答するために『教行証文類』が著されたことが分かります。
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ラインダンス

ども、林遊@なんまんだぶです。

>蓮如上人の教学を正しく理解するためにはその背景を看過しては通じない。このことは従来の宗学では余り問題にされなかったが、甚だ重要である。親鸞聖人の教学の背景も同様である。しかし蓮師と宗祖の上では異なるのである。このことは七祖の上にも通ずる。

浄土真宗では、一器瀉瓶(いっき-しゃびょう:一器に入っている水を別の器に移すように、教えのすべてが伝わることを意味する語)と云って、まるでラインダンスのように七高僧の教え(教学)と御開山の教えは同一だといいます。
しかし、それは七高僧の教学を御開山の教学の上からのみ理解といふ方法論でしょう。しかし、七高僧はそれぞれが自らが置かれた時代と格闘し、称名〔なんまんだぶ〕による仏法を展開して下さったのでした。
その意味では、七高僧の教学は一つひとつの山であり、その教学の山の連なりの集大成が御開山の浄土思想です。
http://labo.wikidharma.org/index.php/%E8%A8%BB%E9%87%88%E7%89%88%E8%81%96%E5%85%B8%E4%B8%83%E7%A5%96%E7%AF%87%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80

ですから御開山の浄土思想の構造は重層構造であり難解といふことは「証文類」「真仏土文類」などを読めばわかります。
もっとも浄土真宗の実践としては、「念仏成仏これ真宗」とか「本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほかなにの学問かは往生の要なるべきや」で、学問より愚者向けの法義でした。

「凡情を遮せず」
http://labo.wikidharma.org/index.php/%E5%87%A1%E6%83%85%E3%82%92%E9%81%AE%E3%81%9B%E3%81%9A

自分が賢いと思っている高森親鸞会の会員は、この〔なんまんだぶの〕意味ががわからんのです。

なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ

Re: 林遊@なんまんだぶ様

> 浄土真宗の実践としては、「念仏成仏これ真宗」とか「本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほかなにの学問かは往生の要なるべきや」で、学問より愚者向けの法義でした。

こうした愚者向けの法義を、真実の仏教として証明するのは実に難しいことだったと思います。また、そうであるために御開山の思想が重層構造であり、そしてそのために様々な学問的解釈が発生してそれぞれ学派、宗派が分かれているのでしょうね。

なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ・・・

No title

高僧方の教えは、全く同じ教えだ
というと違いを見落としてしくださいますが、違っているけど念仏を顕さんがためと見ると違いが、なぜそうされたのかと思い巡らせて面白いですね。

念仏の力のみありて
ですね。
ただ本願を仰ぎ信じて、愚痴にかえってなんまんだぶ申します。

Re: チュウビ様

七高僧方はそれぞれの発揮がありまして、全く同じ教えかというとそうではありません。
ただ、私達の救い、私達の実践の面では「真実の信心で念仏せよ」との教えで一致しています。それを特に正信偈によって知ることができます。

ですから私達としては、チュウビさんの仰る通り、「ただ本願を仰ぎ信じて、愚痴にかえってなんまんだぶ申」すのみです。

なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ・・・

当為と存在

ども、林遊@なんまんだぶです。

>こうした愚者向けの法義を、真実の仏教として証明するのは実に難しいことだったと思います。また、そうであるために御開山の思想が重層構造であり、そしてそのために様々な学問的解釈が発生してそれぞれ学派、宗派が分かれているのでしょうね。

重層構造といふ表現で叩かれたこともありましたが、本願による済度をアニメ画のセルのように経・論・釈の個々の「文類」を重ねて、法然聖人の説かれた選択本願念仏の仏法を証明されたのだと思ふ。
特に善導・法然両師の開示された往生浄土教を、曇鸞大師の『浄土論註』によって包み込み、仏道の本流である「浄土真宗は大乗のなかの至極なり」(御消息p.787)とされたのでした。御開山は、叡山の仏教学のエリートである隆寛、聖覚、幸西などのグループに属していたと言われます。証空は法然聖人門下に属した時期は早いのですが教学的には叡山で学んだことがないのだが、同一グループ(安心派)に属して属していたといわれます。

「安心派・起行派」
http://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/%E5%AE%89%E5%BF%83%E6%B4%BE%E3%83%BB%E8%B5%B7%E8%A1%8C%E6%B4%BE

証空は後に天台教学を学び天台の「開廃会」の論理を用いて『観経』の定散の諸行を意味づけされたのでした。高森親鸞会の主張である、諸善は廃するものではなく、それを修している自力心が悪いのであるから、その自力心を捨てるために諸善(ようするに高森親鸞会への献金)をなすべきに利用されやすいのだが、西山派の方から言えば、ふざけるなと云われるであろう。
我、何を信ずべき(beeing)かと、我、何をなすべき(doing)とを、ごっちゃするから浄土真宗の御法義は難しいのである。──ドイツ哲学上での当為と存在の文脈で理解してもいいかも、知らんけど。
http://blog.wikidharma.org/blogs/blog/2019/01/23/%e5%ae%89%e5%bf%83%e9%96%80%e3%81%a8%e8%b5%b7%e8%a1%8c%e9%96%80/

深川倫雄和上は、私を大切にするよりも、わたくしを大事に思って下さる阿弥陀様を大事にした方がええですよと仰っていたものである。ありがたいこっちゃ。

http://blog.wikidharma.org/blogs/blog/2010/07/24/%E8%A6%AA%E6%8E%A2%E3%81%97/

なんまんだぶ なんまんだぶ なんまんだぶ

Re: 林遊@なんまんだぶ様

私としては林遊さんは色々と知らないことを教えて下さるので有難いですが、退会者の中には林遊さん嫌いが少なくありません。林遊さんとしては過去何十年も親鸞会の歴史を見てきて、その悪業悪行ぶりを目に耳にしてきたことでしょうから、そこから出た人間がかつての自分がそれまでやってきた行為を忘れて何をやっとるかと思う気持ちがあることも分かります。一方で、騙されてきた人生に終止符を打って新たなスタートを切った退会者が、キリスト教の原罪のように親鸞会にいた頃のことを穿り出して叩かれることに嫌悪感を示す気持ちも分かります。今の私が言えることではないですが、もっと仲良くすればいいのにと思っています。しかし、対面ではなく文章だけのやり取りでは難しいですね。


> 西山派の方から言えば、ふざけるなと云われるであろう。

間違いありません。尤も高森会長は西山の開廃会など知らないでしょう。私利私欲を満たすためだけに教えを利用し、会員を利用・搾取する。そのために開廃会のような理論を思いついたのだと思います。それに騙され、自ら悪を重ねた者は数え切れません。許し難き根源は高森会長です。

なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ・・・

No title

重層構造は良いんじゃ無いですか?
ただし、何でもかんでも重層構造だと言って無理やり当てはめることが問題なんですが、それくらいは理解してもらいたいものですね。
例えば、初層で話が完結、二層でも話が完結しているなら重層構造ですよ。一部分だけ二層で前後は初層では筋が通っていないと指摘しただけ。
高森会長と同じ思考と言われても仕方がないのでは無いですか?
プロフィール

淳心房&しゃあ

Author:淳心房&しゃあ
(淳心房)
平成21年10月に親鸞会を退会し、「親鸞聖人の正しい教えを真偽検証する」ということで、専らコメンテーターとしてやってきました(^^)v
しかし、ようやく自分の中での真偽検証は終了したので、名前も改め、淳心房と名乗ります♪
ただし「真偽検証」は今まで馴れ親しんだ名前ですし、親鸞会教義が親鸞聖人の正しい教えなのかどうなのか、一人一人が真偽を検証して頂きたいと思い、ブログのタイトルとして残しました。
一人でも見て下さる方があれば幸いです☆


(しゃあ)
平成21年8月に親鸞会を退会しました。淳心房さんと共同でブログを書いています。何かありましたらメール下さい~
singikensho@yahoo.co.jp
(スパム防止のため@を大文字にしてあります。メール送信時は小文字に変えて下さい。)

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