正信偈の内容(11)ー月愛三昧

『親鸞の世界』(加茂仰順師)より引用

   一

 ご開山さまは「信の巻」に「涅槃経」を四ヵ所までもご引用になってあります。それは第一に至心を釈されるところで、真実ということをあらわすため、第二に信楽を釈されるところ、第三に聞其名号の聞の字を釈されるところ、第四に唯除五逆誹謗正法を釈されるところなどであります。ことにその第四のところにおいて、阿闍世王(あじゃせおう)のことが出てまいります。
 阿闍世はまことに心が慳貪邪見であって、父王を殺し、母までも殺そうとした悪逆無道の王でありました。あるとき全身に瘡腫(かさ)が出来てうみ血がたえず流れ出るために、その臭気というたら、それはそれは、そばへも寄れぬ臭気でありました。母の韋提希夫人(いだいけぶにん)はいろいろの薬をできものに塗られたけれども、一向にその効能が見えないばかりか、ますます重くなるばかりです。ところが、阿闍世王は以前の罪を思い出して、ああわれは大恩をうけた父を殺したその上に、母に不孝を重ねた罪が報うて、このような難病にとりつかれたのであって、この病気は身体ばかりの病気ではない。心の病気であって、地獄の果報が近づいてきたのである。われも数かぎりない罪があるのだから、身も心も苦しいのである。だれかわが身と心を治するものはないものかと、大臣たちにお尋ねになりました。すると大臣の中には、たくさんの外道がありましたから、いろいろと外道の法を申し上げましたが、少しもお用いにならず。時に耆婆大臣(ぎばだいじん)はふかく医術に達した人でありましたが、王様に申し上げるには、私はこの病気を診察しまするに、いっさいの良医妙術を施しても、なかなか治する病気ではありません。これを治するものは釈迦如来よりほかにはございません。いまその釈迦如来は涅槃の雲におかくれなされる時でありますから、早く説法をお聞きなさいと申し上げました。その時空中に声があって、われは汝の父頻婆沙羅(びんばしゃら)である。汝いま耆婆大臣が言うように、はやく釈迦如来の治療を受けるがよい。阿闍世はこの父と耆婆大臣との勧めにより、釈迦如来の教えをこうむりたいとたのみをおこされました。すると釈迦如来はすでにこのことをお知りなされて、阿闍世王のために月愛三昧におはいりになされ、大光明を放たしたまい、その光明をもって阿闍世の体をお照らしになると、病は即座に癒りました。そこでこの月愛三昧というのは、月の光で優鉢羅(うばちら)の花が咲きますが、それのように、釈迦如来の光明は、いっさいの人々の心の中に花を咲かすゆえに、それで月愛三昧というのであります。

   二

 それから釈迦如来がお弟子方に仰せられるに、善き友を持たねばならぬ。いま阿闍世王は耆婆大臣のことばによって、わが教えを聞こうとして病が治したのである。もし耆婆大臣がいなかったならば、七日の後に阿鼻地獄に堕つるのであったと仰せられて、体の病が癒ったが、これから心の病を治さねばならないとて、だんだんと阿闍世に説法なされて、一切衆生悉有仏性の法を説かせられました。このところがご開山の大切にさとされるところで、仏性とは至心であります。これをこうむったところが信楽(しんぎょう)、これが信心です。阿闍世の病が本復して往生を得られたように、私たちも、無始以来の悪業煩悩を本復させていただくのです。
 秋と言えば月を思い、月と言えば今の話のごとく月愛三昧の尊いみこころを味わいよろこばせていただくことであります。正信偈の底を流れているものは、この月愛三昧の如来の底なしの慈愛であります。「如来一切のために常に慈父母となり給えり。まさに知るべし、もろもろの衆生はみなこれ如来の子なり。世尊の大慈悲は衆のために苦行を修し給う。人の鬼魅に狂わされて狂乱して所為多きがごとし」とあるそれです。この一切諸仏の内心の秘密、それはどうしても逆悪の衆生があきらめきれない大慈悲心が凝り固まって法蔵菩薩とあらわれ、一切不捨の大誓願をおこして阿弥陀如来とならせられたのでした。私たちは釈迦、弥陀二尊の教えによって「自力心をすてて、弥陀にまかす」という無上の信心に住せしめられ、ここに根本的に救われるのであります。

(p.238~p.241)
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(淳心房)
平成21年10月に親鸞会を退会し、「親鸞聖人の正しい教えを真偽検証する」ということで、専らコメンテーターとしてやってきました(^^)v
しかし、ようやく自分の中での真偽検証は終了したので、名前も改め、淳心房と名乗ります♪
ただし「真偽検証」は今まで馴れ親しんだ名前ですし、親鸞会教義が親鸞聖人の正しい教えなのかどうなのか、一人一人が真偽を検証して頂きたいと思い、ブログのタイトルとして残しました。
一人でも見て下さる方があれば幸いです☆


(しゃあ)
平成21年8月に親鸞会を退会しました。淳心房さんと共同でブログを書いています。何かありましたらメール下さい~
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