現生正定聚について(2)-転成、仏凡一体、真実の利益

『真宗の教義と安心』(本願寺出版社)より引用

第五章 念仏者の利益
 第二節 現生の利益
 イ、現生正定聚について

(つづき)

 親鸞聖人は、「行文類」に本願力のはたらきを海にたとえて、

 「海」といふは、久遠よりこのかた凡聖所修の雑修・雑善の川水を転じ、逆謗闡提・恒沙無明の海水を転じて、本願大悲智慧真実・恒沙万徳の大宝海水と成る。これを海のごときに喩ふるなり。まことに知んぬ、『経』に説きて「煩悩の氷解けて功徳の水となる」とのたまへるがごとし。(一九七)
 (「海」というのは、久遠よりこのかた、凡夫や聖者の修めた自力の善根や、五逆・謗法・闡提などのはかりない煩悩の水を転じて、本願の慈悲と智慧とのかぎりない功徳の海水とすることである。これを海のようであるとたとえる。これによって知られる。経に「煩悩の氷がとけて功徳の水となる」と説かれている通りである)

と明かされ、また和讃にも、

 無碍光の利益より     威徳広大の信をえて
 かならず煩悩のこほりとけ すなはち菩提のみづとなる
                      (『高僧和讃』五八五)
 弥陀智願の広海に     凡夫善悪の心水も
 帰入しぬればすなはちに  大悲心とぞ転ずなる
                     (『正像末和讃』六○七)


と歌われている。第三章において述べたように、信心は阿弥陀仏がその功徳の全体でもって完成された名号と別個に存在するのではなく、信心は仏心そのものであるということができる。
 これを蓮如上人は、

 さらに一念も本願を疑ふこころなければ、かたじけなくもその心を如来のよくしろしめして、すでに行者のわろきこころを如来のよき御こころとおなじものになしたまふなり。このいはれをもつて仏心と凡心と一体になるといへるはこのこころなり。(二帖目第十通、一一二四)

と言われる。すなわち、信の一念において、凡心(凡夫の煩悩罪濁の心)が、仏心(阿弥陀仏の清浄真実の心)で満たされ、転ぜられて、一味となるのである。これを仏凡一体という。
 さて、仏凡一体といわれても、私たちは依然として煩悩のままの存在であり、凡心が仏心に転成されるということは、他力念仏の行者の信心の内的価値を述べたものと考えられる。しかし、信心を獲ればすでに悟りをひらき成仏しているという意味があると理解することは誤りである。そのことは前節において正定聚の利益と滅度の利益とを区別するべきであることを述べたことからも明らかである。
 なお浄土真宗における利益が無量の徳であるといわれるが、十種の利益の中には物質的な利益は挙げられていない。『大経』には、

 田あれば田に憂へ、宅あれば宅に憂ふ。……田なければ、また憂へて田あらんことを欲ふ。宅なければまた憂へて宅あらんことを欲ふ。……たまたま一つあればまた一つ少け、これあればこれを少く。斉等にあらんと思ふ。たまたまつぶさにあらんと欲へば、すなはちまた糜散す。かくのごとく憂苦してまさにまた求索すれども、時に得ることあたはず。(「下巻」五四)
 田があれば田に悩み、家があれば家に悩む。……田が無ければ田を欲しいと悩み、家が無ければ家を欲しいと悩む。……たまたま一つが得られると他の一つが欠け、これが有ればかれが無いというありさまで、つまりは、すべてを取りそろえたいと思う。そうして、やっとこれらのものがみな整ったと思っても、それはほんの束の間で、すぐにまた消え失せてしまう。そこで、嘆き悲しんでふたたびそれを求めるが、もうそのときには、得ることができない)


とあるように、物質的な利益は究極的な利益とはいえない。信心の利益は、無上の功徳をそなえた名号が至りとどいたという利益であって、世間的な利益と比較することのできない勝れた利益である。

(六八~七六頁)
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平成21年10月に親鸞会を退会し、「親鸞聖人の正しい教えを真偽検証する」ということで、専らコメンテーターとしてやってきました(^^)v
しかし、ようやく自分の中での真偽検証は終了したので、名前も改め、淳心房と名乗ります♪
ただし「真偽検証」は今まで馴れ親しんだ名前ですし、親鸞会教義が親鸞聖人の正しい教えなのかどうなのか、一人一人が真偽を検証して頂きたいと思い、ブログのタイトルとして残しました。
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