信心の生活(2)-悲嘆と慶喜

『真宗の教義と安心』(本願寺出版社)より引用

第五章 念仏者の利益
 第二節 現生の利益
 ロ、信心の生活

(つづき)

 親鸞聖人は、『教行信証』の処々に自らの心情を吐露されている。「信文類」には、

 まことに知んぬ。悲しきかな愚禿鸞、愛欲の広海に沈没し、名利の太山に迷惑して、定聚の数に入ることを喜ばず、真証の証に近づくことを快しまざることを、恥ずべし傷むべしと。(二六六)
 (まことに知られる。悲しいことには、愚禿親鸞は愛欲の広海に沈没し、名利の太山に迷惑して正定聚の数に入ったことをそれほどにも喜ばず、一日一日と浄土の悟りに近づくことを快しむ心もおろそかである。恥ずべきことであり、傷ましいことである)

と述べられ、「化身土文類」には、

 慶ばしいかな、心を弘誓の仏地に樹て、念を難思の法海に流す。深く如来の矜哀を知りて、まことに師教の恩厚を仰ぐ。慶喜いよいよ至り、至孝いよいよ重し。(四七三)
 (慶ばしいことには、心を広大な本願の仏地に樹て、念を不思議な法海にはせている。深く如来のお慈悲を知り、まことに師匠の御恩の厚いことを仰いで、慶びいよいよ深く、感謝の思いがますます重い)

と述べられている。すなわち、聖人は自らの煩悩を悲しまれ、阿弥陀如来の救済を喜んでおられるが、これは第三章において述べた二種深信に配当できるであろう。機の深信より生じた悲嘆、法の深信より生じた慶喜であるゆえ、この悲嘆と慶喜は別なものではなく、阿弥陀如来の救済を深く喜ぶ慶喜にうらづけられた悲嘆であり、自らの煩悩性を深く悲しむ悲嘆を背後に持つ慶喜である。御消息に、

 としごろ念仏して往生ねがふしるしには、もとあしかりしわがこころをもおもひかへして、とも同朋にもねんごろにこころのおはしましあはばこそ、世をいとふしるしにても候はめとこそおぼえ候へ。(七四二)

とあるように、自らの煩悩性・罪悪性に対する慚愧・悲嘆が、その煩悩性・罪悪性の厭離としてはたらくのは当然であり、ここに念仏者の生活が自らの煩悩的欲求に無批判に従う生活ではないとの理由がある。
 また、阿弥陀仏の慈悲は、悪人を救済しようというものであるゆえ、悪人こそが救済の正しき対象であるという、いわゆる悪人正機が成立するのであるが、慈悲とは慈(いつくしみ)と悲(かなしみ)であり、罪悪深重・煩悩成就の自らが、阿弥陀仏に慈しまれていると同時に悲しまれているということを信知するものは、その煩悩性・罪悪性を厭離しようとするのもまた当然の結果であろう。ただし、そこには、厭離しようとしてもなお厭離しえないことに対する深い慚愧・悲嘆があることも注意されなければならないであろう。(つづく)
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No title

御開山の、「慶ばしき哉」、「悲しき哉」、「誠なる哉」の三哉ですね。

情を強調する浄土教は、ともすれば怠惰と懈怠に陥りやすいから気を付ける様にと言われたことがありましたが、慙愧と感謝の交錯した世界ですね。
もちろん、阿弥陀さまの真実なるものに触発される慙愧であって、某会でいわれるような悲泣雨涙の罪悪感とは別次元の話ですが。

>林遊@なんまんだぶ様

確かに注意しなければなりませんね。真宗教義は一歩聞き間違うと造悪無碍の邪義に陥りますし・・・
某会は罪悪ばかりで救いがないのです。これでは苦しいばかり。ただそれだと人は離れていくので少しだけ救いをにおわせるようなことを言います。それで他の世界を知らず、救いをあきらめきれない人はまんまと洗脳されてしまいます。
危うく一生騙されるところでした。林遊様はじめ教義の誤りを指摘される方々がおられ、感謝しております。親鸞聖人の教えに遇う縁となった会長にも感謝せねばなりませんが、彼の説く所は邪義がほとんどなので残念至極です。それを明らかに指摘することが知恩報徳になるのかなと考え、これからもマイペースで更新していきたいです。
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(淳心房)
平成21年10月に親鸞会を退会し、「親鸞聖人の正しい教えを真偽検証する」ということで、専らコメンテーターとしてやってきました(^^)v
しかし、ようやく自分の中での真偽検証は終了したので、名前も改め、淳心房と名乗ります♪
ただし「真偽検証」は今まで馴れ親しんだ名前ですし、親鸞会教義が親鸞聖人の正しい教えなのかどうなのか、一人一人が真偽を検証して頂きたいと思い、ブログのタイトルとして残しました。
一人でも見て下さる方があれば幸いです☆


(しゃあ)
平成21年8月に親鸞会を退会しました。淳心房さんと共同でブログを書いています。何かありましたらメール下さい~
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